今年もフジロックに行って来て、思ったことは色々あるけれど、ここに書くのはひとつのことだけ。今年は渋さ知らズのこと。


そもそもまず今年は、暑過ぎる。人が多過ぎる。という、この二つが大きかったのだが、とはいえ、記憶を遠くまでさかのぼれば晴天の苗場は初体験ではないし、人が多過ぎると、どういうことが起こるかも経験したことがあるので、個人的にはそれでそんなに困ったことはなかったかな。まぁ、確かにどっちも凄かったんだけど。天気のことはさておき、入場者数についてはやはりRadioheadをブッキングしたことがただひとつの理由であろう。このブッキングが呼び出したのは、「ロックフェス行ったこと無いけど、Radioheadが来るなら行ってみようかな」という人よりも(そういう人もいるだろうけど)、それよりなにより「ここ最近フジロック行ってなかったけど、Radiohead来るんだったら久しぶりに行ってみようかな」という人なんじゃないかな。


特に人が多かった3日目の日曜日。Field of Heavenがもしも人で溢れかえってしまうと、さすがに僕もグッタリして嫌になってしまうんだけど、さすがRadiohead効果だけあって、案の定夕方過ぎになると奥まったステージはボチボチの人の量になった。だけど、極端にいつもより少ないということではなく、だいたいこの辺はいつもこんな感じだよな。という印象。Field of HeavenでDirty Dozen Brass Bandのライブが始まる。いい具合に日が落ちて暗くなり、気がつくと野外会場の中心にあるミラーボールがまわり出す。あぁ、やっぱりこういうことなんだよな。いつもと違うことなんて、何一つ無いんだよな。


そして、更に奥にあるステージ(Orange Court)の、この日のヘッドライナーが渋さ知らズ。ステージに向いながら横に歩いてる人が「うわ、すげー人多い」と言っていたが、それはオーディエンスが多いということではなく、ステージ上の人が多過ぎる。ということである。ここもやっぱりオーディエンスの量は例年と同じくらい。今年最大の注目であるRadioheadに対してさっぱり関心を示さず、そして奥の方のステージにいるこの人達はきっと、誰が出演するかなんて全然関係なく毎年フジロックに来て、そしていつもこの辺の奥まったステージで自分の時間を過ごしている人達である。来年もきっとここに夜来れば、同じ人がきっといるんだろう。


しかしながら、である。この日の渋さ知らズは、なんかちょっと違った。去年の11月頃に一度ライブを見ているのだが、そのときは「あぁ、いつもの渋さ知らズだなぁ」と思ってたんだけど、この日はそれとは少しだけ印象が違った。メンバー全員がステージ上で寿司詰めになってPA、モニターのセッティングをして、そのままなだれ込むように本番が始まるのはいつもと同じ。しかし、一曲目がYen Town Band(swallowtail butterfly)のカバーである。確かにいい曲である。そして、渋さが演奏すればそれは渋さの音楽としてしっかりと消化される。ちなみにその次はライディーン。この選曲に「あれ?」と肩透かしを食らいつつも、それが渋さ知らズであることはやはり変わらない。いつも同様にガンガンの大盛り上がりだ。


Sandiiさんがゲストボーカルで登場したり、その他カバー曲をとりあげつつ、そしていつもおなじみの曲も演奏しつつ、ライブ本編終了。この時点で「あぁ、今年もよかったなぁ」という気分になってしまっている。Radioheadを見なかったことは微塵も後悔していないし、ここに来て本当によかったと思ってしまっている。もう大満足なのだ。ライブ本編終了後、アンコール待ちをしていると少し長めの時間を置いて、諦めかけた頃に再度オーケストラが登場。「いつも長くやり過ぎてアンコールはしないのだけど、今日は、演奏がしたい」と不破氏のMCが入ってから演奏されたのは、さっきも聴いたswallowtail butterflyのイントロだった。「アンコールいつもしないから、もう曲がないということなの?」という苦笑いがオーディエンス皆の顔に滲みでたのだが、気がつくとステージ中央には、小柄な女性が顔を布でかくしてコソコソと立っていた。


え、、、、えーーーー!!!


フジの会場からradioheadネタを呟いたのは推定約1万人以上いるだろうけど、「swallowtail butterfly」を呟いたのはたぶんその1/100くらいの人ではないだろうか。


フジロックベイベー!!

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渋さのほかにもうひとつだけ。


僕は3日目は必ず朝まで踊り過ごすことにしている。朝方のRed Marqueeで疲れ知らずで踊り狂っている人や、Palace of Wonderで底なしで飲んでいる人や、眠いしもう疲れて足も動かないんだけど、それでも音楽に合わせて体を揺すっている人、もうこの時間が終わろうとしていることを感じながらも、とにかくみんな最高の笑顔。みんなニタニタしている。この光景もやっぱりいつもと全然変わらない。そして頭に浮かぶ台詞だって例年とまるで何も変わらない。


みんな、また来年もここで会おうね。